御岳・忍者返しの岩の現在|ホールド欠損の真相と新グレードを徹底解剖
東京都青梅市の多摩川沿いに広がる御岳ボルダー。日本のフリークライミングの歴史を語るうえで外せない象徴的な巨岩が「忍者返しの岩」です。日本のボルダーグレードの基準として長年君臨し、数え切れないほどのクライマーが目標として掲げてきた聖地ですが、2018年秋に発生したホールドの破損事故によって大きな転機を迎えました。
あれから年月が経ち、岩のコンディションや登攀ラインはどう変化したのでしょうか。かつて「初段の登竜門」と呼ばれた課題の難易度推移から、欠損の真相、現在主流となっているムーブの解析、現地へのアクセスや周辺エリアの魅力まで、現場のリアルな最新情報を詳しくまとめました。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:核心部ホールド欠損後、名作「忍者返し」は従来の初段から二段〜三段(V8〜V10相当)へと大幅に難化し、新ムーブで完登が重ねられている。
- 要点2:破損の背景には人為的なチッピング疑惑や経年劣化、過度なブラッシングが指摘され、外岩マナー向上の大きな契機となった。
- 要点3:JR青梅線「御嶽駅」から徒歩圏内という圧倒的な好立地は健在で、周辺の鵜の瀬岩などとともに御岳ボルダーの中心的スポットとして愛され続けている。
【2026年最新】忍者返しの岩の現在|ホールド欠損の真相とグレード変動
日本国内のボルダラーにとって、御岳ボルダーにそびえる「忍者返しの岩」は特別な存在です。1980年代に草野俊達氏によって初登されて以来、看板課題「忍者返し」は日本の「初段」という難易度の絶対的な物差しとして、世代を超えて親しまれてきました。
しかし、2018年11月末、核心部となる重要なアンダーホールド(右手で保持するポケット状のカチ)が突如として欠損。破片が岩の真下に散乱しているのが発見され、クライミング界に激震が走りました。一時は「もう登ることは不可能なラインになってしまったのではないか」と絶望視されたものの、トップクライマーたちの手によって新たなムーブが開拓され、現在は難易度が大きく引き上げられた新世代の課題として息を吹き返しています。
欠損前の「忍者返し」は初段の基準課題でしたが、現在の体感グレードは「二段から三段(V8〜V10程度)」へと難化しました。かつての明快なアンダー保持が使えなくなったため、わずかに残された細かい結晶カチや、より下部の悪いホールドを指先で耐え抜き、極限までボディテンションを高めて次のリップへ手を伸ばす非常にシビアな登攀が求められます。
チッピング疑惑と岩の変遷|失われた名ホールドをめぐる議論
ホールドが破壊された直後、現場の痕跡から人為的にホールドを削り取ったり加工したりした「チッピング」の疑いが浮上し、SNSや専門メディアで激しい議論が巻き起こりました。断面の鋭利さや破壊の規模から不自然さを指摘する声が多く上がった一方で、数十年にわたり何万人ものクライマーが体重をかけ続けたことによる金属疲労のような自然崩落、あるいはワイヤーブラシ等による過度な研磨が原因とする見解も示されています。
真相が完全に特定されることはありませんでしたが、この事件はクライミングコミュニティ全体に強烈な警鐘を鳴らす結果となりました。自然の岩場は一度壊れてしまえば二度と元には戻りません。この痛ましい出来事をきっかけに、岩を愛するボルダラーの間で過度なブラッシングの自粛やチョークの清掃徹底、岩へのリスペクトを再確認する機運が急速に高まりました。
新生「忍者返し」の攻略法|現在の登り方とムーブの要点
ホールド欠損後も、岩に立ち向かうクライマーの情熱が消えることはありませんでした。現在の「忍者返し」を完登するためには、かつてとは異なる高度な足技と強靭な指の保持力が不可欠です。
現在の主要な登り方では、スタート位置から左手のスローパーを効かせつつ、右手は破損跡に残る極小のエッジをピンチ気味に保持します。右足を高い位置のスメアリングやエッジングに置き、体幹を固めてデッドポイント気味に上部のカチへと手を伸ばすムーブが標準化してきました。
完登への決定打となるのは、右足の踏み込みの精度と繊細な重心移動です。以前のようにアンダーで引きつけて身体を浮かせることができないため、足が抜けないよう足首の角度を微調整しながら、一瞬のタメを作ってリップを取りに行く瞬発力が試されます。冬場のフリクションが良い時期を見極めてトライすることが、成功率を大きく左右します。
忍者返しの岩を取り巻く名課題と周辺エリア|鵜の瀬岩や名ルートの魅力
忍者返しの岩には、メインの「忍者返し」以外にも歴史に名を刻む数々の傑作課題が凝縮されています。
代表的な課題の状況は以下の通りです。
・クライマー・イン・ザ・ダーク(三段):岩の右側から忍者返しのリップへと抜けるロングルート。下部の持久力と上部の処理が要求される名作。
・虫(三段) / 蛙(三段):低いスタートから岩の弱点を突いて抜ける極限の課題群。欠損の影響を部分的に受けつつも、現在もハイレベルなクライマーの目標として君臨。
・素登り(1級):岩の左側に位置するダイナミックな課題。ホールド欠損の影響を受けておらず、現在も当時のままのラインを楽しめる。
また、忍者返しの岩から多摩川沿いを少し下流へ歩いた場所には、人気エリアの「鵜の瀬岩(うのせいわ)」が位置しています。「鵜の瀬トラバース」をはじめとする多彩な課題が揃っており、忍者返しの岩でパンプした後にセッションを楽しむクライマーでいつも賑わっています。最新の「御岳 ボルダリング トポ」を一冊手元に用意しておくことで、岩場のラインやグレードの変遷を照らし合わせながら歴史を味わうことができます。
御岳ボルダーへのアクセス・駐車場ガイド|御嶽駅からの徒歩ルート
御岳ボルダー最大の強みは、都心からのアクセスの良さにあります。電車を利用する場合、JR青梅線「御嶽駅」から忍者返しの岩の場所までは徒歩約10分〜15分で到着します。駅前の横断歩道を渡り、御岳渓谷の遊歩道へ降りて川沿いを上流側へ歩いていくと、木々の間に堂々たる巨岩姿が見えてきます。
自家用車で訪れる場合は、「御岳ボルダー 駐車場」の事前確認が必須です。御嶽駅周辺には「タイムズ御嶽駅前」や、川沿いの「寒山寺駐車場」「御岳苑地駐車場」などの公営・民営駐車場が点在しています。ただし、好天の週末や紅葉シーズンは一般の観光客やカヌー愛好家も多数訪れるため、午前中の早い時間帯に満車となるケースが珍しくありません。トラブルを避けるためにも、可能な限り電車移動を選択するか、早朝の到着を心がけましょう。
外岩ボルダリングのマナー徹底|次世代へ聖地を残すための心得
御岳渓谷はクライマー専用の施設ではなく、地元住民の生活圏であり、多くのハイカーや観光客が憩う公の自然公園です。岩場環境を未来へと残すため、外岩ボルダリングのマナー厳守が今改めて強く求められています。
絶対に守るべき基本ルールは以下の4点です。
1. チョーク跡のブラッシング:登攀後はブラッシングを行い、岩に付着したチョークを落として自然な状態に戻すこと。
2. ゴミの完全持ち帰り:テーピングの切れ端やタバコの吸い殻、飲料容器は必ず持ち帰る。
3. 遊歩道の通行妨害防止:クラッシュパッド(ボルダリングマット)で一般歩行者の通行を妨げないよう、配置に細心の注意を払う。
4. 夜間・早朝の騒音配慮:民家が近いため、大声での声援やナイトクライミングの光・騒音は厳禁。
歴史ある岩場を次の世代へと受け継ぐためにも、一人ひとりの良識ある行動が欠かせません。
【忍者返しの岩】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:ホールドが壊れた後、忍者返しの岩は初心者が登れる課題もありますか?
A1:忍者返しの岩自体は「素登り(1級)」や「忍者返し(二段〜三段)」など中・上級者向けの課題がメインです。ただし、御岳ボルダー全体を見渡せば「マエクラの岩」や「とけたソフトクリーム岩」など、7級〜3級程度の初級者向け課題も豊富に存在します。
Q2:忍者返しの岩は雨の日でも登ることができますか?
A2:傾斜があるため一部のホールドは濡れにくい構造ですが、川沿いに位置するため湿度が高くフリクションが極端に悪くなります。また、濡れた岩は強度が落ちてホールドの再欠損を招く恐れがあるため、雨天時や雨上がりのトライは避けるのが鉄則です。
Q3:現在の「忍者返し」に公式な統一グレードはありますか?
A3:自然の岩場であるため公的な統一基準はありませんが、再登した複数のトップクライマーたちのコンセンサスとして「二段〜三段(V8/V9〜V10相当)」という評価が広く定着しています。
まとめ:変遷を乗り越えて輝き続ける御岳ボルダーの未来
名ホールドの欠損という悲劇を経験しながらも、「忍者返しの岩」はクライマーたちの情熱と創造力によって新たな命を吹き込まれました。難易度が上がったことで課題の性格は変わりましたが、美しい多摩川の清流を背に受けて巨岩と対峙する魅力は、今も色あせることはありません。
聖地でボルダリングを楽しめる日常は、自然の恵みと先人たちの配慮の上に成り立っています。マナーと思いやりを胸に、生まれ変わった御岳の歴史的ボルダーへ挑戦してみてはいかがでしょうか。 (出典: 忍者 返し の 岩(Yahoo!ニュース))