血圧の単位「mmHg」の読み方は?なぜ水銀なのか歴史の真相と最新基準
健康診断の検査結果シートや日々の血圧計の画面で必ず目にする「120/80 mmHg」という数値。毎日のように見かける記号でありながら、いざ声に出して読もうとすると「ミリミリエイチジー?」「ミリ水銀?」と戸惑った経験を持つ人は少なくありません。
アルファベットと記号が組み合わさったこの単位には、医療の歴史と物理学の進化が凝縮されています。世界的に水銀機器の規制が進み、デジタル血圧測定が標準となった2026年現在も、なぜ「水銀」の名を冠した単位が使われ続けているのでしょうか。単位の正確な読み方から、水銀が使われるようになった歴史の真相、最高血圧と最低血圧の仕組み、最新の正常値基準まで徹底的に解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:「mmHg」の公的な読み方は「ミリメートルエイチジー」「水銀柱ミリメートル」「ミリ水銀柱」の3通りが存在し、現場では「ミリ」と略されることも多い。
- 要点2:国際単位系の標準は「kPa(キロパスカル)」だが、医療現場の誤認事故防止と歴史的経緯から「mmHg」の使用が国際的に認められている。
- 要点3:水銀血圧計が全廃された現代でも、135/85 mmHg(家庭血圧基準)などの健康指標として「mmHg」は不変のスタンダードである。
【基礎知識】血圧の単位「mmHg」の正しい読み方と3つの呼び名
血圧の数値の後ろに添えられている「mmHg」の読み方には、用途や場面に応じて主に3つの呼び名が存在します。
最も正式な学術的・日本語名称は「水銀柱ミリメートル(すいぎんちゅうミリメートル)」または「ミリ水銀柱(ミリすいぎんちゅう)」です。一方で、アルファベットをそのまま読んだ「ミリメートルエイチジー」も広く浸透しています。「mm」は長さを表すミリメートル、「Hg」は元素記号で水銀(ラテン語のHydrargyrumに由来)を表しており、文字通り「水銀柱を何ミリメートル押し上げる圧力か」を意味しています。
英語表記では「millimeter of mercury(ミリメーター・オブ・マーキュリー)」と表現され、国際的な医学論文でも「mm Hg」とスペースを空けて記載されるのが通例です。実際の日本の医療現場では、医師や看護師が患者へ説明する際、煩雑さを避けるために「上が120ミリ、下が80ミリ」といったように「ミリ」とのみ呼ぶケースも日常的に見られます。
なぜ血圧測定に「水銀」が使われるのか?血圧計の仕組みと歴史の真相
では、なぜ圧力を表すためにわざわざ「水銀」という重金属の名前が使われているのでしょうか。その理由は、18世紀にまで遡る血圧測定の歴史と、物理的な液体特性にあります。
人類が初めて血圧の測定に成功したのは1733年、イギリスの生理学者スティーブン・ヘールズによる実験でした。ヘールズは生きた馬の動脈に長いガラス管を垂直に差し込み、血液がどの高さまで吹き上がるかを測定しました。その結果、血液(比重がほぼ水と同じ)の柱は約2.5メートル(水柱に換算すると約8メートル)もの高さに達したのです。しかし、人間の血圧を測るたびに数メートルのガラス管を立てるわけにはいきません。
そこで注目されたのが、常温で液体として存在する金属の中で最も比重が重い「水銀」でした。水銀の比重は水の約13.6倍もあります。水を使えば1メートル以上押し上がってしまう圧力でも、水銀を使えばわずか数十ミリから数百ミリの高さに収まります。この物理的特性を応用し、1896年にイタリアの医師スチピオーネ・リヴァロッチが現代の血圧計の原型となる「水銀血圧計」を開発しました。
腕にカフ(圧迫帯)を巻き、動脈を圧迫して血流を止め、そこから徐々に空気を抜いて水銀柱が上下する高さを見るという水銀血圧計の仕組みによって、医療従事者はコンパクトな装置で正確な血圧を可視化できるようになりました。その歴史的測定法が、そのまま現代の単位名として受け継がれているのです。
「国際単位系(SI)はkPa」なのになぜmmHgが医療現場で残り続けるのか
科学の統一規格である国際単位系(SI)において、圧力の標準単位は「Pa(パスカル)」または「kPa(キロパスカル)」と定められています。気象予報で使われるヘクトパスカル(hPa)などと同じく、物理学の世界ではパスカルへの統一が原則です。
計量法や国際標準化機構(ISO)の観点から見れば、血圧も「kPa」で表記するのが論理的です。実際に単位換算を行うと、1 mmHg ≒ 0.1333 kPa(1 kPa ≒ 7.5 mmHg)という計算になります。もし血圧をkPaで表記した場合、一般的な正常値である「120/80 mmHg」は「16.0/10.7 kPa」というまったく異なる数値に変わります。
しかし、医療現場でこの換算を一斉に適用すると、医療従事者や患者の間で深刻な投薬ミスや診断の混乱を招くリスクが極めて高いと判断されました。そのため、日本をはじめとする世界各国の計量法では「生体内の圧力の計量」に限って、例外的に「mmHg」の使用が公的に認められています。
また、物理学や真空技術で使われる圧力単位に「トル(Torr)」があります。これは水銀柱ミリメートルを考案したイタリアの科学者トリチェリにちなんだ単位で、「1 Torr = 1 mmHg(厳密には定義上の微差があるものの実用上は完全同等)」です。しかし、医療の現場では計量法の規定により「Torr」ではなく「mmHg」を用いることが厳格に定められています。
2020年以降、「水銀に関する水俣条約」によって水銀を用いた医療機器の製造・輸出入が原則禁止となり、病院やクリニックから昔ながらの水銀血圧計は姿を消しました。現在使われている電子血圧計は圧力センサー(半導体ピエゾ抵抗センサーなど)で計測していますが、表示される単位は長年の臨床知見を守るために「mmHg」がそのまま採用されています。
「最高血圧・最低血圧」の違いとは?収縮期と拡張期のメカニズムを解説
血圧を記録する際、必ず「120と80」のように2つの数値を計測します。この2つの数値が具体的に何を意味しているのかを理解することは、自身の健康管理において欠かせません。
上の数値である最高血圧(収縮期血圧)は、心臓が力強く収縮して全身に血液を送り出した瞬間に動脈へかかる最大の圧力を指します。心臓がポンプとして最も強く押し出したときの圧力であるため、数値が高くなります。
下の数値である最低血圧(拡張期血圧)は、血液を送り出した後に心臓が拡張し、次の拍動のために血液を溜め込んでいる最中に血管へかかっている最小の圧力を指します。心臓が休んでいる間も血管壁が弾力性によって縮み、血液を前へ送り続けるため、圧力がゼロになることはありません。
動脈硬化が進行して血管のしなやかさが失われると、心臓から押し出された血液の衝撃を血管が吸収できず、最高血圧が跳ね上がりやすくなります。また、末梢血管が細く硬くなると血液が流れにくくなり、最低血圧が高止まりする原因となります。2つの数値の差(脈圧)もまた、血管の健康状態を測る重要なシグナルです。
【2026年最新基準】血圧の正常値と高血圧のボーダーライン
血圧の単位を理解した上で押さえておくべきなのが、日本高血圧学会の最新ガイドラインに基づく血圧の判定基準です。血圧基準は「診察室で測る数値」と「自宅で測る家庭血圧」で基準値が異なる点に注意しなければなりません。
リラックスした状態で測れる家庭血圧は、緊張によって数値が上がりやすい診察室血圧よりも5 mmHg低く設定されています。
| 血圧分類 | 診察室血圧(mmHg) | 家庭血圧(mmHg) |
|---|---|---|
| 正常血圧 | 120未満 かつ 80未満 | 115未満 かつ 75未満 |
| 正常高値血圧 | 120〜129 かつ 80未満 | 115〜124 かつ 75未満 |
| 高値血圧(予備軍) | 130〜139 または 80〜89 | 125〜134 または 75〜84 |
| 高血圧(Ⅰ度以上) | 140以上 または 90以上 | 135以上 または 85以上 |
近年はスマートウォッチやウェアラブルデバイスの普及により、日常生活における24時間の連続的な血圧変動データをモニタリングする技術が進歩しています。日々のわずかな数値の変動に一喜一憂するのではなく、「mmHg」という単位が示す圧力の意味を理解し、中長期的な平均値のトレンドを把握することが心血管疾患の予防につながります。
【血圧 単位 読み方】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:診察室で医師に「上が130」と言われたら、単位は何を指していますか?
A1:日本の医療機関で医師が単に「130」と言う場合、それは「130 mmHg(水銀柱ミリメートル)」を指しています。会話をスムーズにするため単位を省略するのが一般的ですが、カルテや検査結果表には正式に「mmHg」と記載されています。
Q2:血圧の単位に「Torr(トル)」が使われないのはなぜですか?
A2:物理学的には「1 mmHg = 1 Torr」として扱われますが、日本の計量法において生体計測用の圧力単位として認められている法定計量単位が「水銀柱ミリメートル(mmHg)」と明記されているためです。医療現場での規格統一と法的な正確性を保つためにTorrは使用されません。
Q3:海外旅行先や海外製の血圧計でも「mmHg」で通じますか?
A3:世界中のほぼすべての国で血圧の標準単位として「mmHg」が採用されています。アメリカやヨーロッパ諸国、アジア各国でも同様であり、英語圏では「millimeter of mercury」または単に記号表記でそのまま理解されます。
まとめ:血圧の単位を理解して日々の健康管理に役立てよう
血圧の単位「mmHg」は、18世紀の馬の実験から始まり、水銀という金属の特性を生かして進化を遂げた医学の結晶です。「ミリメートルエイチジー」「水銀柱ミリメートル」という呼び名の裏には、患者の安全と医療の連続性を守り続けてきた歴史があります。
水銀血圧計自体が役目を終えた現代でも、カフの中に込められた圧力基準は変わりません。日々の測定で「mmHg」の数値と向き合う際は、心臓が押し出す生命の力強さに思いを馳せながら、適正な数値を維持するためのセルフケアに役立ててください。 (出典: 血圧 単位 読み方(Yahoo!ニュース))