神戸・旧居留地「チャータードビル」解体新書!歴史と現在・見学のツボ
異国情緒と洗練された都市景観が交錯する港町・神戸。その中でもひときわ重厚な気品を放つエリアが、かつて外国人居留地として栄えた「旧居留地」です。海岸通に面して堂々と佇むチャータードビル(旧チャータード銀行神戸支店)は、昭和初期の息吹を今に伝える近代建築の傑作として、建築愛好家や観光客の視線を集め続けています。
1938年の竣工から幾多の歴史の波を乗り越え、現在は感度の高いオフィスやショップが入居する複合ビルとして活用されている同建築。本稿では、名建築家が手掛けた設計の秘密から現在のテナント事情、見学や写真撮影のポイントまで、現地取材の視点を交えて余すところなく紐解きます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 歴史と設計者:1938年竣工、英国の名門「チャータード銀行」の支店として外国人建築家ジェイ・ハーバート・モーガンが設計を担当。
- 建築の魅力:堂々たるイオニア式風の古典主義列柱とモダニズムが融合した、海岸通を代表する近代建築。
- 現在と見学:現役のオフィス・商業ビルとして稼働中。外観の鑑賞やエントランス周辺の意匠、周辺レトロ建築との散策がおすすめ。
【名建築の原点】1938年竣工・旧チャータード銀行神戸支店が歩んだ激動の歴史
神戸の海岸通9番地に建つチャータードビルは、1938年(昭和13年)に英国系の「チャータード・マーカンタイル・バンク・オブ・インディア・ロンドン・アンド・チャイナ(現スタンダードチャータード銀行)」の神戸支店として完成しました。当時、東洋屈指の貿易港として繁栄を極めていた神戸において、外国為替や貿易金融の最前線を担う極めて重要な拠点でした。
着工から竣工に至る1930年代後半は、世界情勢が緊迫度を増し、日本国内でも鉄鋼をはじめとする建築資材の統制が強まりつつあった時期です。そうした逆風下にあっても、惜しみなく上質な石材や堅牢な鉄骨鉄筋コンクリートが投入され、細部に至るまで妥協のないクラフトマンシップが貫かれました。
第二次世界大戦の神戸大空襲や、1995年の阪神・淡路大震災という二度の未曾有の災禍を経験しながらも、強固な構造と丁寧な維持補修によって倒壊・解体を免れた経緯は、まさに神戸の近代都市史における奇跡的な証言者といえます。
【建築家J.H.モーガンの美学】古典主義とモダニズムが織りなすディテール
チャータードビルの意匠を手掛けたのは、横浜山手西洋館のベーリック・ホールや山手111番館、丸石ビルディングなどを設計したアメリカ人建築家、ジェイ・ハーバート・モーガン(Jay Herbert Morgan)です。日本に定住し、数々の名建築を遺したモーガンの晩年を飾る代表作の一つに数えられます。
ファサード(正面外観)を見上げると、まず目を奪われるのが2階から3階を貫く巨大なイオニア式ピラスター(付け柱)です。古典主義(クラシシズム)の重厚な厳格さを漂わせつつも、装飾を過度にあしらうのではなく、直線的ですっきりとしたモダニズムの手法が巧みに融合しています。
外壁を彩る重厚な石張り、縦長に伸びるリズミカルな開口部、そして真鍮や木材が贅沢にあしらわれたエントランスの金物細工など、どこを切り取っても1930年代のアメリカン・クラシックの洗練が息づいています。華美な装飾を削ぎ落としながら威厳を保つそのプロポーションは、現代の建築デザイナーからも極めて高い評価を受けています。
【チャータードビルの現在】気になる館内テナントとカフェカルチャーの系譜
かつて銀行としてマネーが行き交ったチャータードビルは、現在デザイン事務所、アパレル関連オフィス、ギャラリー、高級セレクトショップなどが入居する洗練された商業・オフィスビルとして愛されています。
ビル好きやレトロファンにとって記憶に新しいのは、かつて1階の旧銀行ロビーで営業していた伝説的カフェ「E.H BANK(イー・エイチ・バンク)」の存在でしょう。高い天井と金庫扉を活用したクラシックな内装で長年親しまれ、神戸のカフェカルチャーを牽引しました。同店が惜しまれつつ歴史に幕を下ろしたのちも、空間のポテンシャルを活かした期間限定のポップアップや展示、上質な空間提案が随時行われています。
建物内部は現役のビジネス拠点として稼働しているため、一般的な観光施設のように全館を自由に回遊することはできませんが、1階の共用部や店舗スペースなど、利用可能なエリアから当時の息吹を十分に感じ取ることができます。訪れる際は、最新のテナント営業情報をチェックしておくと安心です。
【海岸通の近代建築群】旧居留地を巡る写真撮影&観光散策ルート
チャータードビルを訪れるなら、隣接する海岸通・旧居留地の近代建築群とセットで散策するのがベストです。このエリアには、明治から昭和初期にかけて建てられた日本有数のレトロビルが密集しています。
チャータードビルのすぐ隣には、渡辺節が手掛けたアール・デコ調の傑作「商船三井ビルディング(1922年竣工)」や、角塔が印象的な「神港ビルヂング(1939年竣工)」が並び立ち、壮麗なストリートスケープを形成しています。
写真撮影を楽しむなら、日中の自然光が陰影を際立たせる午前中から正午過ぎ、あるいは街灯がクラシックな外壁を照らし出す黄昏時(ブルーアワー)が絶好のタイミングです。広角レンズを使って見上げるアングルで撮影すると、列柱のスケール感と石造りの質感が美しくフレームに収まります。
【見学マナーとアクセス】スムーズに楽しむための訪問ガイド
チャータードビルを訪れる際は、現役のテナントビルであることを意識し、マナーを守った鑑賞を心がけましょう。
【外観・共用部の見学マナー】
- オフィス利用者や一般テナントの妨げにならないよう、長時間の入り口付近の占有は避ける。
- 商業スペース以外のプライベートエリアへの立ち入りは原則禁止。
- 写真撮影時は人物の写り込みや三脚の使用に配慮する。
【交通アクセス】
チャータードビルは公共交通機関からのアクセスが極めて良好です。JR・阪神本線「元町駅」東口から南へ徒歩約8分、地下鉄海岸線「旧居留地・大丸前駅」からは徒歩約5分で到着します。三宮駅周辺からも旧居留地のブティック街を眺めながら徒歩10〜15分ほどで歩けるため、神戸観光のウォーキングコースに組み込むのが最適です。
【チャータードビル】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:チャータードビル内部の一般見学ツアーなどは開催されていますか?
A1:定期的な一般公開ツアーは常時開催されていませんが、神戸市や建築関連団体が主催する「オープンモニュメント」等のイベント時に特別公開されるケースがあります。通常時は外観の鑑賞や、営業中の店舗・共用エントランスからの見学が基本となります。
Q2:チャータードビルの中に現在カフェはありますか?
A2:長年親しまれた「E.H BANK」の閉店後、テナントの入れ替わりやリニューアルが行われています。周辺の旧居留地エリアにはレトロビルを活用したカフェやハイブランド併設カフェが多数点在しているため、建築巡りの休憩スポットには事欠きません。
Q3:設計者のJ.H.モーガンは他にどのような建築を手掛けていますか?
A3:横浜の「ベーリック・ホール」「旧日赤横浜特別病院(現・横浜市立大学附属病院関連施設)」「根岸競馬場一等馬見所」、東京・神田の「丸石ビルディング」などが有名です。端正な古典様式とアール・デコを融合させたスタイルを得意としました。
まとめ:時代を超えて愛される神戸旧居留地のランドマーク
激動の昭和初期に誕生し、震災を乗り越え、令和の現在もなお都市の品格を支え続けるチャータードビル。石造りの重厚な列柱とモーガンの卓越した意匠は、デジタル化と再開発が進む現代において、本物の素材と手仕事だけが持ちうる不変の価値を雄弁に物語っています。
神戸の街を歩く際は、ぜひ海岸通に立ち寄り、港町の歴史と美意識が凝縮されたこの名建築を見上げてみてください。ファサードに刻まれた陰影一つひとつに、神戸が積み重ねてきた豊かな物語を感じ取ることができるはずです。 (出典: チャーター ド ビル(Yahoo!ニュース))